「本の紹介」カテゴリーアーカイブ

蒼翼の獅子たち

蒼翼の獅子たち
蒼翼の獅子たち
志茂田景樹

維新の回天をなしとげた先輩たちは、いまこの国を動かしている。われわれにとって
維新の回天にあたるものはアメリカへの留学であった。そのわれわれは、どうやって
国を動かすことが可能なのか。それは法律、経済の知識を持ってこの国を背負ってたち、
国を大いに富ませることの出来る後輩を、人材をどんどん世に送り出すことではないか。
それがわれわれに課せられた責務であり、新しい使命なのだ。

私の母校、専修大学創立者の物語です。報恩奉仕の精神によって4人の若者が
健学するまでの物語。維新の動乱も冷めやらぬ中、故郷を離れて異国で学んだ
志士たち。彼らは志がなければ諦めて帰国していただろう。
順風とはいかないがゆえに、磨かれる大志。諦めなければ道はできるのだという
啓発の書となっています。維新の動乱に勝るとも劣らない、現代の動乱を生き抜くために
本書はエネルギーをもたらしてくれます。若者は特にどうぞ。
オフィシャルサイト
http://www.souyoku.com/

平成狸合戦ぽんぽこ

平成狸合戦ぽんぽこ [DVD]
平成狸合戦ぽんぽこ [DVD]
野々村真,石田ゆり子,清川虹子,高畑勲,上々颱風,村田雄浩,芦屋雁之助,泉谷しげる,三木のり平,林家こぶ平,福澤朗,桂米朝,柳家小さん
今こそ上映してほしい映画だ。
普通にみても面白いのだけど、以前紹介した、アクエリオンでいう内なる獣を
意識してみたらまた違う風に見えるのではないか。
狸的なもの。狐的なもの。人間にはそうしたものが宿っているから
かつて狐憑きなどと呼ばれていたのだろう。
自分とは何かを知るときに、周囲が鏡となる。
人間を知る際にも、現代が抱えている問題が人間性の鏡となっている。
狸たちが苦悩している様は、人間たちの苦悩でもある。
現代は問題解決の糸口がみつからないくらい複雑に絡み合っている。
問題解決という思考そのものが問題をまた作り出す。
そうした先が見えない困難にあたったときに、どう生きるか?
権太のように生きるのか?
はたまた、ポン吉のような化けられない、つまり人間でいえば、
金を稼げない人はどうなるのか?
私が学んだことは、意味のないと思えることでもやってみる。
やる前に判断しない。そもそも意味があることばかり追い求めた結果が
現状なのだから。
最後の文太の台詞が心に刺さります。
また折りをみて見直したい映画だ。エンディングテーマがまたいい!

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義

誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義
誰も知らない 世界と日本のまちがい 自由と国家と資本主義
松岡 正剛
21日に紹介した、17歳のための世界と日本の見方の続編。
これも面白い。この本を読んで初めて、自分は無意識に明治維新を
無条件に認めていたことに気がづきました。
明治維新は素晴らしいことになっているが、果たして本当にそう
だったのか?あれから日本がおかしくなったことはないのか?
日本的なるものとは何なのか?
考えさせられました。近代国家が背負っている業に、いつまでも
我々が付き合うこともありません。世界が混沌しているいま、
新しい仕組み作りに向かう絶好の好機です。
次の政治経済を考える上で、この本は経緯をわかりやすく要約して
くれているので大変ためになります。新年に向かって読書するには
最適な本ではないでしょうか。
年末年始で再度読み直して、「世界と日本のまちがい」をじっくりと
見つめてみたいと思います。

創聖紀

創聖のアクエリオン DVD-BOX
創聖のアクエリオン DVD-BOX
河森正治,寺島拓篤
かなーり時間をかけて、やっと全部見終えました。
ちなみに私はレンタルですが。一話一話に教訓が面白おかしく織り込まれ
半ば苦笑しながらも、終わりに興味があり、だらだらと気が向いたときに
見続け、半年くらいかけてやっと今日見終わった!
最後はよかったなー。
人の内なる心に潜む獣とどう向き合っていくか。
いま時代は新しい創世記を必要としています。
今に生きてる奇跡に感謝しながら、目の前のことに取り組んでいきたいですね。
愛とは、厳しくわかりづらいものですな。
制作者の野望に恐れ入りました。

17歳のための世界と日本の見方

17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義
17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義
松岡 正剛
以前、坂井さんのご厚意で、連塾に参加させていただいたことがある。
その時は、なにやら難しいことをいっているなー。やたら物知りなだけの
いわゆる知識人なのかなーと失礼なことを思っていた。千夜千冊といった
膨大な書評も、ちょっと読むだけで先に続かない。長すぎるし、
わかりづらいと避けていた。名刺交換した時は、穏やかな教授といった
感じで、ゼミなら楽しそうだなという印象だった。
本屋で見かけて、実際の講義を基にした本ということで手に取ってみたら
面白そうなので初めてきちんと読んでみた。
面白い。急に興味が出てきて、次の本も買ってしまった。
それについてはまた。
17歳のためとあるが、大人も読んだほうがいい。
私もこの本を読んで、部分的だった知識がつながって合点がいった。
自分の好きな個所を一部紹介すると、こんなかんじ。

「・・イエスがイエス=キリストとして活動していた期間は大変
短くて、(略)せいぜいその五年くらいの活動です。(略)世界
史上で活躍して大きな業績をのこした人物も、活躍の中心期が五年
とか十年くらいにピークがあったということは、いくらでもある。
けれども言い換えれば、本当に何かをやりたければ、この五年という
期間は非常に大きいものなんです。ファミコンが広がったのも、
ケータイ電話が広まったのも、五年もかからなかったでしょう。
逆にいえば、五年もあれば、何だってできる。(略)
さらにいえば、イエスの五年間をある程度詳しく知っていたのは、
ペテロ以下の十数人の弟子だけでした。前回話したブッダの最初の
弟子が十人。釈迦十大弟子といいますが、でも結局はこの十人が
仏教の誕生に、あるいは十二人がキリスト教の誕生に大きくかかわ
ったわけです。ですから、何かをおこしたければ、最初の十人を
まず作るべき
なんです。そしてそのコア・メンバーとともに五年を
集中するべきです。それ以上はいらない。幕末の吉田松陰の松下村
塾だって、せいぜい二年です」

志操

世に棲む日日〈1〉 (文春文庫)
世に棲む日日〈1〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎
最近読み返している。
志操とは、主義や考えなどを固く守る意志のこと。

「自分はちかごろこう思っている。志操と思想をいよいよ研ぎ、
いよいよするどくしたい。その志と思いをもって一世に跨らんと
している。それが成功するせぬは、もとより問うところではない。
それによって世から謗られようとほめられようと、自分に関する
ことではない。自分は志をもつ。志士の貴ぶところは何であろう、
心をたかく清らかに聳えさせて自ら成すことではないか」p131

松陰の気持ちと同感である。

沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史

沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史
沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史
佐野 眞一
誕生日プレゼントとして頂いたこの本にここまで魅せられるとは。
やはり歴史は人がつくるもの。痛快なウチナンチュ(沖縄人)たちの
人物伝に魅せられ、彼らに会いたくなった。実際に会った人もいるの
だが、それが本で読むとまた違った趣を見せてくる。
人間の魅力は、時代と生き方で決まってくるのではないか。
現代という時代において、魅力的な生き方をしている人は少ない。
彼らの生き様から感じて、時代を作っていくなら彼らも本望だろう。
知らなかったことで一番衝撃的だったのは、差別されていた沖縄人が
奄美人を差別していたことだ。差別された人々は差別をする。
当たり前の構図かもしれないが、そのことに気が付きもしなかった。
現代の日本が抱えている問題は、沖縄問題に集約されるといってもいい。
自分さえよければいいという発想が根本にあり、責任のなすりつけが
横行している。問題に気づいても見ぬふり。行動を起こすことを諦め、
目の前の現実に埋没する。本当にそれで人生満足するのか?
沖縄は日本人にとってのリトマス試験紙だ。知らないままで
現状維持に加担するのか、まずは知ることから行動を始めるのか?
一人ひとりの行動の結果が時代を動かす。
諦めないで向かい続けていこう。かつての日本が歩んだ道に比べたら
今がよほど恵まれているのは間違いない。だから行動が難しいのも
わかる。しかし本を読むことくらいはできるだろう。
真面目に書いたが、ヤクザや芸能についても幅広く触れられているので
好奇心も満たされる。入口はどんなところでも構わない。
まずは本書を手にし、沖縄へ興味を持ってもらいたい。

沖縄人のこうしたパーソナリテイ(常に強者の顔色を見ながら世渡りする、依存体質と事大主義)をつくってきた背景に、アメリカのしたたかな外交戦略の手玉にとられた日本と、自分の勝手な都合で沖縄を思うように振り回してきた日本があったことを、不勉強なメデイアを含めてわれわれ日本人は片時も忘れてはならない。(略)本当に暴露しなければならない戦後史を隠蔽し続けてきたのは、沖縄の悲劇を他人事としてひとり繁栄を謳歌し、世界に顔向けできない恥ずべき官僚や、政権を突然放り出す無責任な宰相を二人も生み出して、いま国際社会のなかで急速に孤立化を深めるわれわれ日本人だったのではなかろうか。

■書評
『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』 佐野眞一著
著者の大見得に偽りなし ●九州大谷短大教授 梁木靖弘
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/book/review/20081103/20081103_0001.shtml
沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 佐野眞一著
 ~「切れば血が出る」沖縄の戦後史論 東洋経済
http://www.toyokeizai.net/life/review/detail/AC/1131590804dcd3645feb38c4a3271780/
琉球新報 書評
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-137086-storytopic-6.html
毎日新聞 今週の本棚:池澤夏樹・評
http://mainichi.jp/enta/book/hondana/news/20081019ddm015070006000c.html
稲嶺一郎さんの話もでてます。

テンペスト

本に久しぶりに熱中しました。寝るのを忘れるほどです。
これは面白い。傑作の小説です。個性豊かな登場人物と
琉球王朝末期の時代舞台が、読む者を魅了するでしょう。
話の合間に、琉歌がでてくるのですが、私が気に入った
歌をご紹介します。

「厚きお恵みや報るかたないらぬ
      朝夕さも千代のお願しやべら」
(国土の厚いお恵みには報いる方法もない。ただ国土が千代までお栄えに
なるように朝夕お祈りいたすばかりです)

我々がいまあるのは、自然のお陰です。いま、周囲にある人工物は、
将来へ残す価値が果たしてあるのかと嘆きたくなります。

「風の声たぼれ西の太陽拝め
         立ちすゆる今や夢やあらに」
(風の声を聞きなさい。沈み行く夕日をご覧なさい。
今私たちがいる場所が束の間の夢のようではありませんか)

いまこの瞬間に存在する奇跡を、改めて感じさせてくれます。
二度とない、すべてが一期一会。時間を止めたくなります。

「このつらさしゆすもにやへもをらやすが
         どくつらさあれば一人ともて」
(ぼくだけが辛い思いをするわけではないのに、
あまりにも辛いので自分だけが苦しい目に遭っていると
思ってしまう。人は勝手なものだ)

今は感じませんが、こう感じたことが何度もあるなーと。
泣いて、笑って、切なくなって、そして最後は人生を思い切り
生きようという気にさせてくるでしょう。お勧めです。
一つだけ、自分の心に刺さる一文がありました。
自戒をこめて記します。
「琉球を愛し、友情を深め、想い出をたくさん持つものほど、
やがて琉球を操ろうとする」
愛は盲目となりませぬように。
ちなみに、池上氏のほかの本もお勧めです。以前読んだ、
「バガージマヌパナス」も最高でした。
テンペスト  上 若夏の巻
テンペスト 上 若夏の巻
池上 永一
テンペスト 下 花風の巻
テンペスト 下 花風の巻
池上 永一
バガージマヌパナス―わが島のはなし (文春文庫)
バガージマヌパナス―わが島のはなし (文春文庫)
池上 永一

熱波

熱波 (ハルキ・ノベルス)
熱波 (ハルキ・ノベルス)
今野 敏
友達が読んでて、沖縄が舞台だというので早速読破。
おもしろーい。沖縄のことが分かっているとさらに面白いですが、
知らない人はより知りたいと思ういいきっかけになるのでは?

「わかっているのだろう?日本の従来のやり方は、もはや役に
立たなくなっている。例えば、ゼネコン主導の公共投資。<中略>
政府与党は、景気対策と言いながら、結局公共投資で金をばらまく
ことしかできない」

7年前に書かれてたこの本のやり方から進歩がない政府のやり方。
しかし状況はどんどん変わってきている。
あり得ないことがどんどん起こる時代。
事実は小説より奇なりといいます。
われわれの周辺で起きていることは、この小説よりも面白いです。
この小説でも出てきましたが、普段東京を中心とした世界地図を
見ているので、東京を中心に考えがちですが、沖縄を中心とした
世界地図を作ると、
http://www.pref.okinawa.jp/summit/jp/a_la/map/index2.htm
こうなります。
台湾、中国のほうが余程東京よりも近いです。東京へいくのもマニラに
行くのも変わらない。普段自分たちの思考というものは、常識とか
概念に支配されていますが、小説はそれを解き放つ役割もありますね。
沖縄の人たちの心情が少し理解できるのではないでしょうか。
ぜひご覧くださいませ。

誰も見たことのない琉球

誰も見たことのない琉球―〈琉球の歴史〉ビジュアル読本
上里 隆史
前回の本が好評につき、第二弾がでました!
上里さんはイラストもかけるので、イメージで伝わりやすいです。
前回より更にパワーアップしてます。沖縄の歴史に興味を持った方には
ぜひどうぞ!!
ちなみに前著はこちら。
目からウロコの琉球・沖縄史―最新歴史コラム
上里 隆史
琉球新報にも書評が掲載されていましたね。
2008090813333320080908133333 posted by (C)ふぁーふぁ