イメージの力

 今日は言わずと知れた子供の日。端午の節句である。季節のイベントは歴史を重ねるごとに本来の意味が失われたり、別の意味を持ち始めたりすることが多い。今は子供の日ということが大きな意味を持っている。子供は未来の象徴だ。

そんな日にシンクロするかのように、未来の象徴ともいえる国内の商業原子炉50基がすべて停止する日でもある。原子力は核の平和利用の象徴でもあり、経済の根本を支えてきた電気の中心であった。一年前に誰がこんな事態が予想できただろうか?
そんな地上を照らし、物事をはっきりと明らかにするように天体ではスーパームーンと呼ばれるイベントが起きている。さらに、流星群もピークだという。この重なりは単なる偶然と普通は捉えるだろう。
時代が違えば、こうした信号は時代を象徴する出来事として捉えられていた。関係ないと言えば関係ない。一体この出来事はどんな意味を持つのか?ゲームとしても考えてみたらいい。世界は決して切り離されてはいない。目の前の出来事から自分へのヒントを探ることができる。
自分の中でこの信号はどんな物語となるのか?人は物語を聞きたいのだ。そして物語の主人公になりたがっている。例えば、起業したいと思っているとする。実際に起業したことがなければ、起業への心の抵抗は大きい。実際に、周囲で起業した人がいなければさらに遠い次元の話となる。主人公になることを諦めてしまう。
実際、自分たちが創業したときは、まだまだ若い人の起業は一般的でなかった。ビットバレーをやっていたときも、インターネット企業というものがまだまだイメージわかなかったので、そのイメージをつかみたくて、みな集まっていたのだ。
知ったり、体験すれば、身近に感じる。いまや起業は選択肢の一つになっている。そうなれば特別なことはなく、心の抵抗も少ない。イメージ持てるかどうかで行動も変わってくる。
いまの社会の問題は、次のイメージがないことだ。一体どんな社会がいいのか?原発ではないとしたらどうやってエネルギーを得るのか?IT革命、金融革命の次は一体なんなのか?
次の夢がないのだ。世界を変えようとするより、どうしたら一生安定した職場が探せるかや、好きなサッカー選手の応援のほうに興味がいってしまう。
自分が起業したときは、次世代のロールモデルになろうと思っていた。あんな生き方もあるんだとおもってもらえたらと。バイアウトなどした人はいなかった。何人かに、
「尾関さんの例を見てバイアウトを自分もしました」と言われたこともある。少しは貢献できたのだろう。
菩薩というロールモデルはそれよりもスケールが大きい貢献を目指している。IT革命の初期に感じた、歴史に参画するという意識を取り戻せると自負している。しかしながら、一人一人が主人公のこの世界で、自ら脇役になりたがる人ばかりなのだ。なんと勿体ない。
自分を主人公としたイメージが持てたとしたら、それが身近に感じられたとしたら、菩薩という生き方への抵抗も少なくなる。菩薩もあくまで方便だ。菩薩でなくてもいい。魂が燃えて使命感あふれる生き方であれば、どんな生き方もロールモデルになる。
自分たちが手掛けている仕事の責任の重さと、新たな世界を切り開いている喜びを感じている。誰にでもできる仕事ではない。そのために多くのものを賭けてきた。真剣に自らの使命を求めて、怠惰や常識と戦っている人間はそうはいない。こんなバカなことをしている人間はそうはいない。その少ないながらも、心の通じ合った同志がいるだけでどれほど幸せなことか。
もう既に新しい世界はここにある。そしてそれは進化し続ける。だから面白い。いつでも新鮮なのだ。なんでもすぐに飽きていた自分が飽きずにやっていることに、自分でも驚いているくらいだ。
自分だけじゃイメージできないからこそ、面白いイメージになる。自分で作った物語は予想できてつまらない。仲間とともに作った物語は予想を超えて面白くなる。
月を見ながら沖縄にて

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